手書きで始めるマイストーリー:心を整理し、言葉を見つける第一歩
マイストーリーを見つけ、表現することは、自己理解を深め、自身の人生をより豊かに感じるための大切なプロセスです。しかし、何から始めれば良いのか、どうすれば心の奥にある思いを言葉にできるのか、戸惑う方も少なくないかもしれません。特にデジタルツールを使った表現に苦手意識がある場合、その一歩を踏み出すのはさらに難しく感じられるかもしれません。
この度、「ストーリーテリング実践ラボ」では、そうした方々に向けて、最も身近で、誰でもすぐに始められる「手書き」によるマイストーリーの記録方法をご提案します。手書きは、心を落ち着かせ、思考を整理し、自分自身と深く向き合うための有効な手段です。
なぜ今、手書きでマイストーリーを記録するのか
現代社会では、デジタルデバイスが情報の記録や共有の主流となっています。しかし、手書きにはデジタルにはない、特有の価値と効果があります。
- 思考の整理と深化: 手を動かし、ペン先が紙に触れる感覚は、脳に直接働きかけ、思考をより深く、自由に巡らせることを促します。キーボードを打つよりも、自然なペースで言葉が紡がれ、心の動きと連動しやすいという利点があります。
- 感情との向き合いやすさ: 手書きは、心の状態や感情の機微をそのまま表現するのに適しています。文字の大きさや強弱、線の流れなど、視覚的な要素も加わり、書く行為そのものが自己表現の一部となります。これにより、言葉にするのが難しい感情にも、じっくりと向き合うことができるでしょう。
- 自由度の高さ: 手書きには決まった形式がありません。文字だけでなく、イラストや図形を書き加えたり、余白を活かしたりと、直感的に表現できます。この自由さが、型にはまらずに自身の内面を解き放つ手助けとなります。
- デジタルへの抵抗感を軽減: デジタルツールに不慣れな方でも、紙とペンさえあればすぐに始められます。複雑な操作や専門知識は一切不要です。
手書きでマイストーリーを始めるための具体的なステップ
では、実際に手書きでマイストーリーを記録するために、どのような準備をすれば良いのでしょうか。ここでは、初心者の方でも安心して取り組める簡単なステップをご紹介します。
1. 準備を整える:心地よい環境を作る
- 道具を選ぶ: ノートや手帳、便箋など、書きたいと感じる紙を選びましょう。お気に入りのペンを見つけるのも良いかもしれません。色ペンや蛍光ペンをいくつか用意すると、後で整理する際に役立ちます。
- 場所と時間を選ぶ: 落ち着いて集中できる場所と、誰にも邪魔されない時間を見つけましょう。例えば、静かなカフェの一角、自宅のくつろげるソファ、朝の誰もいない時間帯などです。最初は10分程度から始めて、徐々に時間を延ばしていくのが良いでしょう。
2. まずは「自由に書き出す」ことから始める
完璧な文章を書こうとする必要はありません。書くこと自体が目的です。
- テーマは問いません: 今日あったこと、昔の記憶、心に引っかかった出来事、感じていること、考えていることなど、何でも構いません。
- 箇条書きでもキーワードでも: 文章としてまとまらなくても大丈夫です。単語を羅列するだけでも、思いつくままに箇条書きにするだけでも、十分に意味があります。
- 「ジャーナリング」の手法: 特定のテーマを設けず、時間やページ数を決めてひたすら書き続ける「ジャーナリング(書く瞑想)」も有効です。頭に浮かんだことをそのまま紙に書き出すことで、思考が整理され、新たな気づきが生まれることがあります。
3. 「マイストーリー」を見つけるヒント
書いているうちに、何気ない出来事の中に「マイストーリー」の種が隠されていることに気づくかもしれません。
- 感情が動いた瞬間を追う: 嬉しかったこと、悲しかったこと、怒りを感じたこと、驚いたことなど、心が大きく揺れ動いた瞬間に注目してみましょう。その時何が起こり、どのように感じたかを深掘りします。
- 印象的な出来事を掘り下げる: 子供の頃の思い出、ターニングポイントになった出来事、誰かとの出会いなど、強く印象に残っていることを具体的に書き出してみましょう。五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)を使って、その時の状況を鮮明に再現してみるのも良い方法です。
- 「なぜ」を問いかける: ある出来事や感情に対して「なぜそう感じたのか」「なぜその行動をとったのか」と問いかけることで、自身の価値観や信念が見えてくることがあります。
4. 表現がもたらす内面的な効果
手書きで自身の内面を表現する活動は、さまざまな良い変化をもたらします。
- 自己理解の深化: 自分の考えや感情を客観的に見つめ直す機会となり、これまで気づかなかった自分の一面を発見できます。
- 心の整理とカタルシス: 漠然とした不安やストレスが、言葉にすることで明確になり、心の重荷が軽くなる感覚を得られることがあります。
- 創造性の刺激: 表現する行為そのものが、新たなアイデアや視点をもたらし、創造性を育むことにつながります。
- 自己肯定感の向上: 自分の内面と向き合い、それを形にするという経験は、小さな成功体験となり、自己肯定感を高めることでしょう。
継続のためのヒント
一度に完璧を目指す必要はありません。
- 短い時間から始める: 毎日5分でも10分でも、無理のない範囲で続けてみましょう。
- 完璧を求めない: 誤字脱字があっても、文章がまとまっていなくても構いません。大切なのは、書き続けることです。
- 自分だけの秘密の場所にする: 誰かに読まれることを意識せず、自由に表現できる場所として大切にしてください。
手書きでマイストーリーを綴ることは、自分自身を深く知り、人生をより豊かにする旅の始まりです。この小さな一歩が、あなたの内なる声と出会い、それを魅力的に表現するスキルを育む大切な基盤となることを願っています。